有吉 漆さんは、品川女子学院に勤められて7年で入学希望者60倍、偏差値20上昇させるなど、学校を都内屈指の人気校に導いた教育界のカリスマ。とはいえ、11年前に校長になられてからはプレッシャーも相当だったと伺っております。
漆 ええ。力んでいたせいもあり体調を崩し、難聴や胃腸の不調に悩まされました。
有吉 その時、始められたのがトライアスロンでしたね。
漆 私の一番元気が良かった時を思い出すと、定期的にスポーツをしていた時。仲間がいて目標が高い競技が良いと挑戦しました。
有吉 今では年代別日本代表として今年も8月にロングの世界大会に出場されます。
漆 コンディショニングに助けてもらいながらですね。足指のアライメントや腰の不調解消、パフォーマンスUPに役立てています。
有吉 お店に通われて、3年。成果はいかがですか?
漆 他のコンディショニングと称するお店に通いましたが、有吉さんのお店で一番 結果が出たので決めました。最初はエステやマッサージのような感覚でチケット会員として本番直前に行っていましたが、今では信頼が深まり週1で通っています。
有吉 長丁場の競技ですからね。トライアスロンのあるトップ選手がコンディショニングを取り入れていて、コンディショニングを行う量が減るとガクンとパフォーマンスが落ちてしまいます。
漆 バイク(自転車)では100㎞を過ぎると出る痛みがあります。それには競技前に軸や身体全体を整えておくことが必要。ちょっとしたズレでもレース後半に大きく影響するのです。
有吉 漆さんは体感覚がとても鋭い方なので気づかれるのでしょうね。
漆 それはコンディショニングによって磨かれた部分もあります。行うと足の接地感が良くなり、立った時に腰の上に背骨が乗る感覚を感じます。その変化の蓄積でズレを察知できています。後は理論がしっかりしているからでしょうね。頭と感覚で理解できるから安心して継続できています。
有吉 私達は運動を科学だと捉えています。NCAは機能解剖学、運動生理学、脳科学に基づいたメソッド。今のスポーツ界には理論より経験論のトレーニングが多いと感じています。
漆 例えば関節の隙間をつくるための牽引もじっくり伸ばす方が良いと言う人もいれば、ピッと伸ばす方が良いと言う人もいる。真逆の正解が存在する中で、いつも混乱しています。選手にとってやり方を変えるのは神を変えるのも同じ。労力をかける分、大きな信頼がないと成り立ちません。
有吉 解剖学など基本となる理論は必ず存在します。指導者の主観で育てられた選手は理論を持ち込むと混乱します。それは、メジャースポーツでも起きているのです。
漆 最近、ある世界的に有名な選手が行っているトレーニングをして肩を痛めました。健康のために始めた運動で後々の人生に悪影響が起きたらと想像すると恐ろしくなります。
有吉 その選手は行う前に他の運動をしてから、確認目的としてそのトレーニングに取り組んでいます。まさに形だけが独り歩きした典型。指導者は選手の身体にもっと真摯に向き合ってもらいたいものです。
漆 2020年オリンピックを目指す選手はまさに中高生。教育者の立場から言えば、方法論が混沌とする世界で一生懸命取り組む子供達の未来がとても心配です。
有吉 子供達を守るためにも、指導者の意識を変えることが急務だと感じます。
有吉 子供の未来と言えば体力低下の問題が心配ですね。
漆 食と運動。健康があってこそ学業と夢の実現がある。
有吉 私は家庭科と体育が一緒になればと思っています。
漆 既存の教科は国語、社会などリテラシー(知識)ベースですが、それをコンピテンス(能力)で括っていく考え方ですね。例えば、あるスイスの学校では体育のかけっこで心拍数を測り、生物を学び、速度で算数も学ぶ。社会で使える力がつく。
有吉 私の運動指導の考えとリンクします。身体を整えるのは健康を整えるため。そのためには、食や生活習慣など様々な観点を結び、総合的にアドバイスできないといけません。子供達には新しい教育が必要です。
漆 成長期にとった栄養と運動がその後の人生を大きく左右する。そういうことをしっかりと教えていきたいと思っています。
有吉 ここ数年、私達も学校の部活動の先生にコンディショニングを教える機会が増えてきています。
漆 PTAを通じて保護者の方々に広めるのもいいでしょうね。親御さんに理解していただければ、お子様にも広がる。家族で簡単にできるセルコン講座はいかがでしょうか?習った方が今度は先生となって他の方々に教える。その循環ができれば草の根的に広がっていくと思うのです。
有吉 可能性が広がる貴重なお話。ぜひ挑戦します。