有吉 「ALE14」から1年経ちましたが、あの日の記憶は鮮明です。今までにない有吉与志恵が引き出された一日でしたから。
伊藤 私にとっても挑戦でした。正直言うと、コンディショニングという言葉選びの難しさを感じました。世間のイメージがまだ曖昧であること、そして「トレーニング=鍛える」という方程式が成り立っているからです
有吉 残念ですが、まさに。整えることが大切ということに辿り着くには、いくつかのステップが必要となります。イベントという限られた時間の中で選んだのはコンディショニングという言葉を使わないことでした。
伊藤 まずは筋肉に対しての興味を引きつける。地道ですが、正しく理解してもらうための選択でした。
有吉 イベント当日までに伊藤さんから3回のロングインタビューを受けましたが印象に残っているものとして「筋肉痛」の話があります。
伊藤 誰もが一度は経験し、非常に身近なものだけど、そのメカニズムはほとんどの人が知らない。特に、「なぜ年をとると遅れてやってくるか」については(笑)。
有吉 日体大で当たり前のように学んでいたので、周知のことだと思っていました。ところが、トレーナーやドクターの中にも知らない方がいて。周りとの認識の差を整理できた出来事の1つです。実際、筋肉痛の話への反応は上々でしたから(笑)。
伊藤 テレビでは不特定多数の方々に短い時間で、分かりやすく簡潔に伝えなければなりません。そういった反応をお聞きすると、自分の経験が多少なりとも生かせたかと嬉しくなります。
有吉 ALE14では1パートたったの14分。しかし、短い時間の中に情報量が十二分に詰め込まれています。言葉の集約や印象づけるフレーズのつくり方、強調の仕方を学べました。
伊藤 ありがとうございます。一方、分かりやすさを追求しながらも、正しい言葉、正しい伝え方も大切にしています。ALE14を始めた大きな理由の1つです。テレビでは、どうしても慣用句に頼りがちですから。
有吉 元プロ野球選手の古田敦也さんの回を拝見し、その意図を理解しました。テレビの古田さんと全然違うからです。専門家としての豊かな言葉に感動しました。
伊藤 テレビは不特定多数の方に伝えるために誰でも知っている平易な言葉を選んでしまいます。例えば、筋肉は「ほぐれない」。ただ、テレビでは「ほぐれる」という言葉を使った方が伝わりやすい。それをほぐれないよ、と踏み込むのがALE14の役目です。
有吉 ALE14の「スポーツを言語化する」という理念に感銘を受けました。スポーツの世界はニュアンスの言葉で溢れていますから。私自身、正しい言葉、正しい理論、正しい理解を求め、日々模索しています。
伊藤 私は有吉さんの観客を惹きつける技術に舌を巻きました。約2時間あるイベントで後半になればなるほど会場の集中力が高まり、盛り上がっていましたから。実際、多くの反響が私の元に寄せられました。
有吉 お酒とお食事を忘れていただくことを目標にしていました(笑)。究極ですが、グラスを持つ暇すら与えないのが理想。それにはどんな言葉を投げかければ良いかを意識していました。
伊藤 肩ブラや首のコンディショニングなど、実技についても同じです。①大勢の人、②席に座っている、③お酒を飲んでいる(笑)。諸条件の中で実技の成果を感じさせないといけません。 それでも、実感させていましたから。 イベントの前後でお客様の表情が劇的に変わりました。
有吉 ありがとうございます。バ ーバル (言語) 指導はNCAにとって大変重要なテーマで、 取り組みを強化しています。 リスク管理という観点からも使って良い言葉、 悪い言葉を整理している最中です。
伊藤 痛み1つとってもそうですよね。 ケガをしている状態をどう定義するか。 痛みを感じただけでケガなのか、 機能不全になったらケガなのか、 人によってそれぞれ認識が異なります。 禅問答に近い感覚です。
有吉 そして、 痛い方が強くなれる、 上手くなれるという認識がはびこっています。
伊藤 有吉さんには常に腑に落ちる説明があります。
伊藤 その上で身体の変化を感じるから確信が持てます
有吉 正しい理論と実技の効果が相まってこそですから。
伊藤 今、2020に向けての意識が社会全体で高まっていますが、 その先に何を届けるかの方が重要。 その1つがコンディショニングかと。
有吉 プランクが一気に世界に広がりましたが、 そのほとんどが間違ったものとして伝わっています。 そのような誤解1つ1つをどう解いてていくかが課題です。
伊藤 今、 テクノロジーの変化により新たな伝え方が生まれています。 伝える技術の革新とともに、 我々の確信をどう広めるかが、 次の挑戦。非常に楽しみです。