NCA | 一般社団法人 日本コンディショニング協会

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スペシャル対談

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  • 有吉与志恵(NCA会長)

スポーツの世界から“痛み”をなくす

新体操界で圧倒的な輝きを放ち続ける東京女子体育大学 新体操部。日本を牽引するそのチームの中で、今スポーツ界に響き渡るであろう小さな革命の波動が生まれています。「痛みから選手を解放する」既存の概念を打ち破る挑戦が始まっています。

演技以前に 「キレイに立てない」。それが悩みでした。

有吉 コンディショニングを導入して3年。生徒たちの身体が随分変わりました。

秋山 本当です。有吉先生に指導していただく前は、演技以前に「キレイに立てない、歩けない」状況でした。

有吉 競技の世界は競技の練習だけに夢中になってしまいますから。初めは筋肉のバランスを崩していました。

秋山 私は筋力が足りないことが原因だと思っていて、新体操の練習で生まれた身体のゆがみであると分かり衝撃を受けました。

有吉 3~4歳から始め、過酷な練習に耐えてきた結果です。

秋山 1つは、反り続けて背骨が硬くなり、背筋を真っ直ぐにできないのですよね?

有吉 あと一番の問題は股関節屈曲筋。股関節をガンガン振り上げる力が強くなっていることが原因でゆがみにつながっています。

秋山 お尻が突き出て、まるでおむつを履いているみたいでした。そのまま、両手をつき4足歩行を始めてしまうのでは?と思って…。特に台湾から来た留学生の選手の姿勢が深刻でした。

過酷な練習により世界一。待っていたのは悲劇でした。

有吉 その選手はロシアの先生に習っていたのですよね?旧ソ連の練習法は非常に過酷であったと聞きました。

秋山 はい。今から約20年前、当時、新体操世界一だった旧ソ連にコーチ留学をした時のこと。指導現場から子どもの叫び声がしたので声の方に目を向けると、巨漢のコーチが股関節を無理やり広げていたのです。もちろん今は改善され安全な指導が行われています。しかし、その時は、ここまでやらなければ世界一になれないのかと、ひどく暗い気持ちになりました。

有吉 ひどい後遺症に悩まされそうですね…。

秋山 友人のエレーナは引退後、生きていくのが辛いほどの痛みに襲われています。選手の時間より、その後の時間の方が遥かに長いのに。ただ、日本の教育現場でも同じようなことはあるのです。ウチにも小さい頃、強いストレッチをかけられ、腰がパキッて鳴った選手がいます。その選手は、それをきっかけに成長できたと思っています。そこが古傷となり痛みが出ているのに。見過ごせないことです。

有吉 ストレッチは痛くないとやった気にならない。

秋山 本当は何ともないことが一番良い状態なのに。

ウォームアップだけで4種類。練習の仕分けが必要でした。

有吉 また筋肉のアンバランスはケガの原因に。でも無理をして、さらに悪化する。

秋山 私は新体操を始めて4年目でオリンピックに出られたので、競技人生が短かった分、痛みがありませんでした。ただ、オリンピック選手の中で痛みのない選手は私くらいだったのです。

有吉 練習量も過剰です。

秋山 ここの新体操部にも世界中からトレーニング法が集まります。どれも要るようで、どれも要らない気がする。取捨選択が難しく、最初はウォームアップだけで4時間程かけていました。

有吉 そこで、私は全てをチェックし「要るものと要らないものを仕分けしてほしい」と依頼されました。

秋山 全部やっていたら故障します。無理をすることが当り前の世界はもうイヤです。

有吉 辛い、痛い、苦しい。それを乗り越えてこそ強い選手になれる。その考え方を変えていきたいですね。

秋山 私は選手の未来を預かる身として、またNCAの参与として、コンディショニングを結果につなげていきたいと考えています。東女の新体操部がさらに強くなれば、自ずと理由に注目が集まりますから。

動きが悪いなら「練習」ではなく「リセット」。

有吉 私の役割は秋山先生がイメージした動きを、ゆがみが原因で表現できない生徒に対して、コンディショニングで解決することです。

秋山 以前は、できない動きはできるまで練習させようとしていました。しかし、筋肉のアンバランスが原因なのに悪循環でした。今では、動きが悪くなった選手にはリセットをさせています。

有吉 さらに、最近は演技の振り付けの中にもコンディショニングの動きを取り入れていただいています。

秋山 約1分半の中に、例えばレッグカールを入れて筋肉を整えると、最後までパフォーマンスがキープできる。世界が変わりました。

秋山エリカ_あきやま・えりか 東京女子体育大学教授、新体操部コーチ。選手としてオリンピックに2大会出場(1984年ロサンゼルス大会、1988年ソウル大会)。NCA参与でもある。秋山先生監修のもと誕生した『表現スポーツのコンディショニング』(ベースボール・マガジン社)。新体操に必要なメソッドが1冊に。

NCAの遺伝子をスポーツ全体に広げたいですね。

有吉 私たちの遺伝子をもった生徒が次に指導者になれば、また広がります。最近では、卒業生から講習の声がかかるようになりました。

秋山 新体操だけではなく、全てのスポーツに広がる時代が来ると良いですね。

有吉 あとは原理原則を言い続けることですね。この前ある競技の練習合宿に参加したら、クルクルトントンをやっている先生がいらっしゃって。ただ、脚の力で振り回していたので、これは正しく伝えていかなきゃと…。理論に裏づけられているからこそ効果が出る。全ての指導者に求めたいです。

秋山 「理論は裏切らない」の徹底ですね。

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